積読日記
Wed, 22 AwGhost 2007 [長年日記]
tDiary 1008日目
■ [book] 戦争と平和 (五), トルストイ (作), 藤沼 貴 (訳), 岩波文庫
読み終えた. モスクワが戦火に包まれる. モスクワに入ってきたナポレオンをピエールは待ち構え, 暗殺しようと試みるのだが, 既に機を逸してしまっていた. ピエールは火災の中から少女を救い出すも, 懐に忍ばせていた短刀のために怪しまれ, 放火の嫌疑をかけられてフランス軍の捕虜となってしまう. モスクワから避難するナターシャは, 避難する一行の中に負傷したアンドレイがいることを知り, 二人は再会するのだが.
自分の行いが理解できない道化としてナポレオンが描かれるのとは対照的に, クトゥーゾフはただひとり大局を見通した人物として描かれる. ここでも小説中に不意に戦争中の果たされない命令の無意味さや, 英雄たちの行為の歴史家による後付の解釈の無意味さなどが強調される. 今のところ, トルストイの歴史観は, 物事の原因をただ一つの物事に求めて特定することなど不可能だし, 重要とされる人物が歴史に与えた影響などは, 兵卒や農民などのその他大勢とされる人々の与えた影響と同程度である, といっているように思える. これは, 次代を先取りした当時としてはかなり進歩的な考え方だったようだ. 刺激的な歴史観で楽しく読めるのだが, 小説の流れをぶった切ってしまうので, 別枠で展開してもらえると読みやすいのではないかと思う. これでも多すぎるから減らされた結果なのだそうだから驚きである. 分離してしまうと小説の部分しか読まれなくなってしまうだろうから仕方がないのだろうけど.
投稿日時 : 2007年08月27日 00:49